産んだ直後は、どうしても自分を責めてしまう
Q.まずはじめに、出産したときの状況や、当時のお気持ちを聞かせてください。
岩崎私は、7か月の健診までずっと、妊娠の経過は順調だと言われていたんです。それが、7か月目の終わりに出血があって、その前の母親学級のときに「妊娠中の出血は危険信号」と聞いていたのですごく心配で……。でも、そのときも血液検査の結果は問題なし。「子宮頸管長が短くなってきているから、自宅安静にしたほうがいいですね」とだけは言われたんですけど、そんな深刻な感じではなかったんですよね。
山口私もちょっと状況が似てるかも。ほんとうに、実際に産むまで自分が早産になるなんて思ってもいなかったんですよね。妊婦健診のときに「子宮頸管長が短くて子宮口が開いてきているから、なるべく安静にしてね」と言われてからは、外出を控えたり重いものは持たないようにしたり、自分では安静に気をつけていたつもりなんです。それなのに、34週目に自宅で突然破水してしまって……。
岩崎私も、自宅でお風呂に入ってるときに破水しちゃったんです。実は、自宅安静と言われたすぐ後に、東京ドームの野球のチケットをとってしまっていて……。
山口野球を観に行ったんですか? 東京ドームの座席って、けっこう急だから、大きいおなかで大変だったでしょう。
岩崎すごく迷ったんですけど、自分の中で「これが出産前の最後のお出かけ」と決めていたので、どうしても行きたかったんですよね。もし時間を戻せるなら、絶対に行かなかったと思いますけど、そのときは行こうと思っちゃって。もう、本当に自分を責めました。最初の1か月は、保育器の中の息子を見るたびに「私があの時出かけなければ、まだおなかの中にいたはずなのに……」と、ぼろぼろ泣いていました。
山口ああ、わかる! 私は、破水して病院に行ってもすぐに産まないで、入院してなるべく36週目までもたせましょうと言われたんです。絶対安静のベッドの上で、とにかく自分を責めていました。「どうして破水しちゃったんだろう」「何がいけなかったんだろう」って、ずっと考えていました。
田中私はちょっと状況が違っていて、33週のときに「おなかの中で子どもがうまく育ってないから、一刻も早く、明日にでも出産しましょう」と言われたんです。最初は自分の中で全然整理がつかなくて、ギリギリまで結論を延ばして35週で出産しました。「このままおなかの中にいたら、慢性の栄養不良で死ぬこともある」と言われていて、早く手術しなければいけないのはわかっているけど、早く産むことへの不安もあって……。やっぱり、自分がいけなかったんだろうかと自分を責めてしまって、産む直前の10日間くらいが、いちばんストレスがかかってたと思います。
今泉私の場合は、22週目で、双子のひとりの羊水が多くて、もうひとりの羊水が少なくなっていることがわかって管理入院をしました。25週目で姉の方の心臓が止まってしまって、緊急手術で出産だったんです。だから、子どもの命が助からない可能性も高かったんです。出生体重は610gと 508gでした。最初はとにかく命が心配で、命が助かってからは、寝たきりになるかもしれないとか、他にもいろんな障害の可能性があると言われたり、手術を受けなくてはいけなかったり……。次から次へと不安が襲ってくるという感じでした。
早産の情報は少ない、あっても不安を増してしまうことも多い。同じ境遇の人からのアドバイスや情報交換が励みに。
Q.早産児ちゃんの子育てをしていて、「こんな情報が足りない!」「もっとあんな情報があったらいいのに」と思っていたことはありますか?
今泉ふたりが産まれた直後に、小さく生まれた子どもの両親の体験記を読んでいたら、そこに書いてあるリスクがすべて自分の子どもにもあてはまるんじゃないかと思って、すごく不安になってきちゃったんです。私はそれで、あえて情報を得るのをやめようと思いました。不安になるだけの情報なら、いっそないほうがいいと思ったんです。NICU に入院している半年間は、自分では何も調べず、担当の先生を信頼して、「こういう可能性があります。手術したほうがいいです。どうしますか?」と言われたら「じゃあ、お願いします」と、すべておまかせ。とにかく、目の前にいるこの子たちのことだけしか見ない、そんな感じで育ててきました。
田中たしかに、情報があると逆に不安になることってありますよね。私は産まれる前から“子宮内胎児発育遅滞”ということがわかっていたので、インターネットで検索したり本を買ったり、情報ばっかり収集してしまって。私のようにおなかの中で育たなくて早産になったケースって、普通に育っていて早産になった人とは、また違う後遺症が出る可能性があるんですって。産まれる前から「後遺症が出るかもしれない」って悩んでも、なんの役にも立たなくて、ただつらいだけなんですよね。実際に後遺症が起こったら、その時はもう立ち向かうしかないんだけど、「なったらどうしよう」って不安になっているときが、いちばん苦しいんです。
山口なるほど、そういう考え方もできるんですね。うちの子どもは4か月になる前でこれから成長していく段階なので、この先どういう障害が起こる可能性があるのかとか、同じくらいの周産期で同じくらいの出生体重の子は、何か月でどれくらいの成長になるのかとか、そういう情報を知りたいな、と思っていたんです。でも、かえってそんな情報がないほうが、自分が楽なのかもしれませんね。
田中ほんとうにそうだと思います。私はインターネットで「低出生体重児」っていうキーワードで検索して情報収集したんですけど、周産期と出生体重がほとんど同じ子どもを比較しても、成長は全然違うんですよね。早産になった原因によっても違うだろうし、そもそも本人がもっている個性もあるし、ひとりひとりがものすごく違うんです。だから、比べてもあまり参考にならなくて、かえって心配の種が増えちゃうかも。
岩崎私は「なんで私が早産になったんだろう」という原因を知りたくて。でも、本を探しても「早産」についての項目ってほんの少ししか載っていなくて、何もわからなくて……。でも、早産の原因なんて、はっきりわからないことも多いみたいですね。
山口たしかに。育児や出産の本を見ても、早産の情報ってほとんど載ってないですよね。
岩崎子どもについての情報は、インターネットを中心に得ていました。妊娠中からやっていたブログに出産後もそのまま育児日記をつけていたら、「早産」とか「NICU」というキーワードで検索して見つけてくれた人が、「私も同じです!」ってコメントを残してくれたりして、早産児ママとのネットワークが広がったんですよね。今は、掲示板で情報交換できる早産児ママが大勢います。たとえば、なかなかつかまり立ちをしなくて心配なときに、「うちもそうだったよ。そのうち立つようになるから心配ないよ」と同じような境遇の人に言ってもらうと、やっぱり言葉の重みが違いますよね。
わかっていても、他の子と比べてしまう・・・。NICUの先生やスタッフには ずいぶん助けられた!
Q.お子さんの成長について、悩んだり焦ったりしたのはどんなことですか? またどうやってそれを乗り越えてこられましたか?
今泉最近は、近所に住んでいる(正期産の)子と、何も気にせず一緒に遊んでいますが、退院した直後は、やはりまわりの子と比べて成長の遅れが気になっていました。「首が座る」「お座り」「立つ」「歩く」までの発達段階は、はっきりわかりやすいからどうしても気になっちゃうんですよね。でも今はもう比べることはありません。 妹は眼鏡をかけていて、姉は補聴器をしているんですけど、近所の子どもたちも、一緒に遊んでいても気にしていないみたいです。
山口私は、ちょうど子どもがもうすぐ4か月で、発達段階が気になってしまう時期にいるんだと思います。ついこの間も、うちの子より2日早く産まれた子がもう寝返りをうったっていう話を聞いて、やっぱり焦ってしまって。頭では、修正月齢で考えればいいっていうのはわかっているつもりなんですけど、どうしても比べてしまうんですよね。「やっぱりなんとなく、どんどん差が広がってしまうような気がして不安になってしまって。
田中その点、私は同月齢の子供をもった友達が身近にいなかったから、比べなくてすんで楽だったのかも。余計なことは考えずに済んで、先に産んでいる友達からは、子育てのアドバイスだけもらっていました。もし、娘と同じ月齢の子とか、12か月後に産まれた子が身近にいて、成長を抜かれていくのを見ていたら、私の性格上つらかっただろうな、と思います。
岩崎うちは、まさにその「少し後に産まれた子」が身近にいるんですよ。2人の従姉妹が同時期に妊娠していて、出産予定日では3人のうち、私がいちばん最後のはずが、私がいちばんに産んで、ふたりを抜かしてしまったんです。お正月に親戚で集まったときに、ほかのふたりの子がお座りしていろんなものをきょろきょろ見ているのを見て、「なんでうちの子だけ寝ころんだままなんだろう……」と淋しくなりました。でも、親戚みんなが心配してくれて、うちの子の成長を喜んでくれるので、もちろん悪いことばっかりじゃないんです。1歳の誕生日だけは、産まれた日と、出産予定日と、2回お祝いしようと思っています。
田中すごいすごい! それいいいね。私も真似して2回お祝いしようかな。
今泉私の場合は、他の子と成長を比べる時期にずっとNICUにいたので、比較して悩んだっていうのはあまりなかったかな。NICUで知り合った友達がすごく支えになりました。退院してからも、お互いにメールをいっぱい送って励ましあって、それは大きな力になりました。
田中私は、けっこう小児科のスタッフさんに救われました。保育士さん、みたいなイメージ。私がへこんでいる間は、そのスタッフさんたちがすごく救ってくれて。「仕事」だという以上に、うちの子をかわいがってくれているのが伝わってきて、嬉しかったです。クリスマスやお正月には、手作りのカードや写真を撮ってくれて、フォトフレームにはめ込んでプレゼントしてくれたり、一緒にお祝いしてくれて。
山口NICUの先生って、小さく生まれた赤ちゃんへの対応に、やっぱり慣れてますよね。おおらかにかまえてくれて、小さいことを「異常なこと」として捉えていない、っていう感じが伝わってきて、こっちも安心できるんです。退院後のフォローアップも修正月齢でみてもらえるからありがたいですよね。「RSウイルスにかかったら大変だから、修正月齢までは、外に出かける機会は控えた方がいい」といったリスクの説明はもちろんのこと、「比べちゃいけないよ」とか「焦っちゃいけないよ」といったアドバイスもしてもらえるので、すごくありがたいなと思います。
子どもの存在が、自分をプラス思考に変えてくれるパワーの源
山口プラス思考って、大事なことですよね。もしかしたら赤ちゃんがこんな小さいうちに会えることだって、普通だったらできない貴重な体験でもあるんじゃないかなと思うし。それに、早産でたいへんだったこともたくさんあるんだけど、その分、子どもに対して「産まれてきてくれただけで嬉しい」とか、「元気に泣いてくれるだけでありがたい」って思う気持ちが強くなった気がします。
岩崎私も、マイナス思考でいたら子どもにも伝わっちゃうんじゃないかって思って、気持ちを切り替えていくことにしたんです。それに、保育器の中であくびしたりしゃっくりしたりしてるのを見て、「胎動で感じていたのはこれだったのか!」って思って、普通に産まれていたら見られなかった成長を目で見ることができるのって、すごいなと思いました。
山口その感じすごくわかります。あと、病院のスタッフの方が、「お母さんに早く会いたくて、早く出てきちゃったのね」って言ってくれたことがあって、その言葉にもすごく支えられました。
岩崎私もそう思うようにしてました。おなかの中にいるときに「早く出ておいで。早く会いたいよ」と話しかけていたのを素直に聞いて、早く出てきちゃったのかな、と。それに、私はもともと性格的に自分のやりたいことを優先しちゃうタイプなので、早産で産まれたのは、神様が「もうちょっと親の自覚を持って、子どもにしっかり目を向けなさい」って言ってるのかな、なんて夫婦で話したりもしました。
田中プラス思考は確かに大切。そこでうまく気持ちを切り替えられるどうかって、すごく重要だと思います。同じ言葉や同じ状況でも、気持ちの持ち方によってプラスにもマイナスにも受けとめられるものなんですよね。実は私、出産して3か月で復職したんですよ。保育園に入れるときに、小さく産んでおいてこんなに早く保育園に入れて大丈夫かな、っていう気持ちもあったし、集団生活で風邪をうつされることへの不安も大きかったんですね。でも、RSウイルスをはじめ、いろいろな予防接種をきちんと受けて、できる予防対策はして、後は保育園との連携を密にとるようにすればいい、と思うようにしたんです。今のところ風邪をこじらせることもなく、元気にしています。
今泉たしかに、何事もプラスとマイナスがありますよね。うちは、双子だから小さく産まれることになったという部分もあるんだけど、双子だったからこそ、ここまで成長できたんだろうな、とも思います。ふたりいるから、お互いに刺激しあって、それが成長にプラスになっているんですよね。もし、子どもがひとりだけで1対1ですごしていたら、家の中が一日静かだっただろうな、と思います。聞き分けのいい子なので、叱ることも少ないし、しゃべることもあまりなくて。ふたりいるからこそ、ふたりでしゃべって、ふたりで競争して、ママの取り合いもして、どんどん成長していってるんだなと感じています。双子で、早産で、たいへんなことはすごくたくさんあったけど、やっぱりふたりで産まれてきてくれてよかったなと思っています。
岩崎そうは言っても、だれでも一度はどん底まで落ち込むんじゃないかと思います。その落ち込んだところからまた浮上できるかどうかは、もちろんお母さんのもともとの性格もあるけど、今、目の前で元気に育っている子どもの存在が、何よりも励みになりますね。
田中そうですよね。いちばん元気をくれるのは、やっぱり子どもの存在だと思います。それに今日は双子ちゃんに会って、610gと 508gで産まれたなんて想像つかないくらい元気に大きくなっている姿に、私も勇気をもらいました。
今泉振り返ってみると、うちは近所に同じくらいの年齢の子どもがいっぱいいるんですけど、小さく産まれた子だからって家にこもるんじゃなくて、普通の子どもたちとも一緒に遊ばせたから、ここまで成長したのかな、と思っています。
山口私も、今日はいろいろとみなさんのお話をうかがって、ほんとうに勉強になりました。早く産まれたからといって、気をつけなければいけないことがちょっと多いだけで、普通に産まれた子と変わらないんだなあ、と素直に実感できました。
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